カネダイの運命を変えた出会い

「蒸し煮スリ大豆」とカネダイの「麹」を混ぜて保存容器に詰め、数ヶ月待つだけで簡単に手作りみそができるセット「おみその学校」
いくつもの奇跡が重なり、この商品はカネダイの運命を大きく変えました。

昭和40年頃、カネダイの主力商品は醤油。
トラックで一軒一軒、山奥まで配達していました。
しかし流通が進み、スーパーなどで簡単に物が手に入るようになり、6代目・井上邦康は考え始めました。

「このままのやり方では、時代の変化についていけないのではないか?」

「自慢の麹を生かした新商品が作れないだろうか?」

当時、農家の各家庭では、近くの麹屋でみそ用の麹を買い、一年分のおみそを仕込むのが冬の恒例行事でした。
そこで、みそ作り用の麹を造り、売り始めました。
しかし、核家族化が進んできたことで大量におみそを仕込む家庭は減っている状況に邦康は頭を抱えました。

「もっと付加価値のある新しい商品を開発しなければ…」

みそ作りで一番骨の折れる作業は、「大豆を前日から水に漬け、何時間もかけて蒸し、潰す」という部分。
この過程を省くことでみそ作りのハードルを下げられないかと考えました。
実験を重ね、大豆を蒸し、潰し、塩を混ぜてから袋詰めした「蒸し煮スリ大豆」が出来上がりました。

「これがあれば30分でみそ作りができる!これは売れるぞ!」

こうして家庭用みそ作りセット「HAND MAKE30」を完成させた邦康。
様々な場所に持ち込んでは、その良さを語りました。
しかし思うようには売れず悩む日々。

「商品はいいんだ。何か売るためのアイデアがあれば…」

そんな時、博多の喫茶店でマスターとおみその話をしていると、隣の人からふと声を掛けられました。
容器メーカーの方で、容器の実演販売を兼ねて料理教室を開催しており、新たなアイデアを探しているというのです。

「私の料理教室で、みそ作りをしてみませんか?」

大家族や親戚でなくでも、友人や近所で集まりワイワイみそ作りを楽しむ。
そんな「みそ作り教室」というアイデアとの出会いは、まさに運命の出会いでした。

試しにその容器でみそを仕込んでみると、密封できてカビが生えにくく、それまで各家庭で使われていた陶器の甕やプラスチックの桶よりも、失敗せずにおみそを熟成させることができました。

「これがあれば初めての人でも、誰でも失敗なく簡単にみそ作りができる!」

各地の教室でみそ作りを教えると、

「思ったより簡単で楽しかった」
「自分で仕込んだおみそはおいしい」

と喜びの声をいただきました。

ちょうどその頃、宅配便が盛んになり、遠方のみそ教室や個人宅へも簡単に配送ができるようになりました。
「おみその学校」と名前を変えたみそ作りセットを全国の教室へ送り、その生徒は全国にどんどん拡大。
こうして「おみその学校」は発売から40年以上愛され続けるカネダイの看板商品になったのです。

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